• 2023年9月7日
  • 2023年12月17日

食事療法・運動療法が推奨される理由(糖尿病治療)

1.食事摂取後の血糖動態

 食事で摂取した多糖類(でんぷん)・二糖類(砂糖)は、消化酵素により単糖類(ブドウ糖=グルコース)まで分解された後、小腸から吸収されます。吸収されたグルコースは、門脈を介して肝臓で30%が取り込まれ、グリコーゲンとして貯蔵されます。肝臓で取り込まれず体内循環に流れてきた 残りの70%のグルコースは、重要なエネルギー源として さまざまな末梢臓器に取り込まれます。末梢臓器は、インスリン作用の強さでグルコース取り込み量が変動するインスリン標的臓器(骨格筋と脂肪組織)と インスリンとは無関係に一定のグルコースを取り込む臓器(脳組織、赤血球、腸管、腎臓など)の 2つに分類されます。末梢臓器で取り込まれずに血液中に残っているグルコース濃度を、血糖値として測定しています。つまり、血糖値を下げたい場合には、食事で摂取する多糖類や二糖類を減らすことが有効です。

図1.食事性グルコースの動態(組織別の糖取り込み)


2.運動は血液中のグルコースの取り込み量を増加させる

 図2左は、末梢臓器ごとのグルコース取り込み量を表した図になります。2型糖尿病患者さんでは、健常者(非糖尿病)と比較して骨格筋の糖取り込みが著しく低下していることが分かります。上記でも解説したように、骨格筋はインスリン標的臓器の1つです。インスリン刺激をうけることで細胞膜表面にGLUT4が誘導されます(図2右)。GLUT4は、血中のグルコースを大量に取り込む際に必要な扉を担っています。糖尿病の主病態はインスリン作用不足であり、骨格筋で上手くGLUT4を発現できないことで高血糖を来しているといえます(少し誇張した表現ですが)。

 では、糖尿病患者さんは、GLUT4を増やすために 糖尿病薬を次々に増やしていく必要があるのでしょうか。答えは NO です。運動による筋肉の収縮刺激は、インスリンの刺激を受けなくても GLUT4を活性化させ、血中のグルコースを取り込むことが可能となります。

図2.左:末梢臓器別の糖取り込み量  右:骨格筋での GLUT4発現 のメカニズム



どうして 食事療法や運動療法が重要なのか、糖尿病療養指導で問題視されるのかについて 理解いただけたでしょうか。

次回から、食事療法や運動療法のポイントについて、詳しく解説していきたいと思います。

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