• 2023年10月9日
  • 2023年12月17日

食事療法⑤:1日の食事のとり方(インスリン抵抗性を軽減する食事療法)

飽和脂肪酸はインスリン抵抗性を増大させ、血糖上昇を引き起こす

 「脂肪酸」は「脂質」の主要な構成要素であり、①エネルギー源、②細胞膜やホルモン、核膜などの構成するための成分として、ヒトにとって欠かせない存在です。「脂肪酸」には、大きく分けて飽和脂肪酸(SFA)、一価不飽和脂肪酸(MUFA)、多価不飽和脂肪酸(PUFA)の3種類があります(図1A)。経口(外因性)で食事から脂肪酸を摂取した場合、SFAの過剰摂取(パルミチン酸、ステアリン酸)インスリン抵抗性を増大させることが知られています(図1B)。また、血液中(内因性)に存在する脂肪酸の中で、糖尿病患者さん、特に血糖コントロールが不良の患者さんでは血中SFA濃度(パルミチン酸)が高値を示し(図1C)、細胞内に様々な影響を与えることでインスリン抵抗性を形成します(図2)。


図1.脂肪酸の種類とインスリン抵抗性



図2.飽和脂肪酸によるインスリン抵抗性メカニズム



1.朝食を摂ることで日中のインスリン抵抗性が軽減する

 血中遊離脂肪酸(FFA)の濃度が高いとインスリン抵抗性が増大し、血糖値が上昇することを上記で解説してきました。私たちの体内では、食事によりインスリンが過分泌されることで、脂肪組織から血中へのFFA放出が抑制されます。食事回数が多いほどインスリン過分泌の回数も多くなり、血中FFA濃度の低下幅は大きくなります。
 血糖コントロールが悪くなると、少しでも血糖を下げようと食事量を減らすために “朝食を抜く” 患者さんに出会うことがあります。この1日2食の食事療法が、むしろ血糖増悪の原因となっている可能性があります。図3は、朝欠食が昼・夕食後血糖に与える影響について評価した研究です。3食摂取した場合と比べて、朝欠食の2食摂取では日中の血中FFA濃度が十分に低下せず、高FFA血症によるインスリン抵抗性の増大やインスリン分泌低下から昼・夕食後血糖が増大しています。朝が忙しい状況でも、少しの朝食をとることで昼・夕食後の血糖上昇が軽減できる可能性を示した研究報告です。



図3.朝欠食による昼・夕食後血糖への影響



2.食事間隔を短くすることで食後血糖上昇が軽減する

 食事の間隔(インスリン過分泌の間隔)が延びると、血中FFA濃度は再び上昇してインスリン抵抗性が増大します。図4の昼食から5時間後の18時に夕食を摂取した(A)と比べて、21時に夕食時間を遅らせた(B)では 夕食後血糖は著しく上昇しています。一方で、18時に主食、21時に副食と4食の摂取ながらも食事間隔を短く設定した(C)では、(B)と比べて夕食後血糖上昇が改善しています。夕食はできる限り早めに摂る、難しい場合には 昼・夕食間に軽食を加えて4分割食にすることで、夕食後血糖上昇が抑制されています。食事間隔を短くすることで食後血糖上昇が軽減される可能性を示した研究報告です。



図4.昼・夕食間の長さの違い による 夕食後血糖への影響

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