• 2023年10月15日
  • 2023年12月17日

食事療法⑥:アルコール飲料と血糖上昇

アルコールの健康への影響、糖尿病患者さんへの影響

 適切な適量のアルコール摂取(エタノール20-25g/日)は、インスリン抵抗性を改善して糖尿病の発症リスクを軽減する可能性があります(Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2010; 20: 366-75.)。しかし、適量を超えて飲みすぎると(男性:40g以上、女性:20g以上)、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病、脳出血・虚血性心疾患のリスクが高まることが分かっています(厚生労働省 2023 e健康づくりネット:図1)。また、糖尿病患者さんでは、過度の飲酒は糖尿病性ケトアシドーシス、乳酸アシドーシス、低血糖などの重篤な病態を引き起こす可能性がある(図2)ため、過度の飲酒は避けることが望まれます。

図1.適量のアルコール摂取量(20g)の 目安



図2.アルコールの過剰摂取 と 代謝異常メカニズム



1.アルコールの種類と食後血糖

 アルコールといっても様々な種類がありますが、血糖値の上昇を考えた場合にどのアルコールを選べば良いのかについて考えたいと思います。2つの研究結果を見ていきたいと思います。どちらの研究ともに、食事と一緒にアルコールを摂取した場合の食後血糖とインスリン濃度の変化を評価しています。日本のグループからの報告では、ビール・芋焼酎・日本酒・水の4種類の飲料水で比較した場合、ビール>日本酒>芋焼酎の順で食後血糖の上昇を認めます(図3A)。一方、海外のグループから報告されたビール・ワイン・ウィスキーでの比較でも、ビールは他のアルコール飲料よりも食後血糖が上昇しています(図3B)。食後血糖の増加を考えると、ビールよりは芋焼酎やワイン、ウイスキーなどの糖質含有量が少ないアルコール飲料を選択されると良いでしょう。

図3.アルコールの種類 と 食後血糖への影響



2.アルコールの御供は “糖質を減らした食事” が良い

 アルコールは、消化酵素の分泌を増やしたり、胃の血流を良くすることで消化運動を亢進させて食欲を増進させる働きがあります。そのため、ついつい食べ過ぎてしまいがちです。アルコールは 1gで およそ7kcalの熱量があり、脂肪(1gあたり9kcal)に次いでカロリーが高くなります。体重増加は、インスリン抵抗性の増大から糖尿病を増悪させるため、”飲みすぎ・食べ過ぎ” には注意が必要です。
 アルコールのお供として、第一位「焼き鳥」、第二位「から揚げ・天ぷら」などの 高脂肪食が好まれる傾向にあります(マイナビニュース:「お酒の定番おつまみ」ランキング 2020年)。高脂肪食を摂取する場合、炭水化物(糖質)を制限せずに 通常通りに摂取すると、食後6-7時間にわたり血糖上昇が認められます(図4A)。一方で、炭水化物を制限することで食後血糖の上昇は抑制されます(図4B)。焼き鳥、から揚げ、天ぷらなどの脂質を多く含む “おつまみ” を食べる場合には、炭水化物を減らしてお酒を楽しむことが良いでしょう。また、脂質・糖質が少ない 豆類(枝豆、豆腐料理)ナッツスルメイカ・さきいか などの “おつまみ” に関しては、食後血糖は上昇しにくいと考えられます(図4C、食事療法③:グリセミック・インデックスの章も参照いただければと思います)。

図4.高脂肪食を摂取した際の 糖質制限の有無による食後血糖上昇の違い(A・B)、豆類による食後血糖変化(C)



食事療法①-⑥の章で、食後血糖上昇を抑えるための “食事療法のポイント” について解説してきました。患者さんの生活スタイル、背景疾患により 食事療法のポイントが異なる可能性があります。担当の先生と相談の上で、食事療法に取り組んでいただければと思います。

次回以降は、運動療法のポイントについて解説していきたいと思います。今後も皆様と 糖尿病に関する知識を共有していければ幸いです。

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