• 2023年11月24日
  • 2023年12月17日

運動療法②:短期的には有酸素運動、長期的には混合運動が良い

 混合運動とは、有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせて行う運動をいいます。混合運動は、有酸素およびレジスタンス運動を単体で行う場合と比べて、それぞれの運動強度が低いことから骨格筋の特性変化は小さくなりますが、端的に述べると 糖・脂質代謝に対して “バランスの良い筋肉” を作ることができます(図1)。

 有酸素運動・レジスタンス運動・混合運動の3タイプの運動が、血糖および体組成(体重、除脂肪体重=筋肉量、ウェストなど)に与えるそれぞれの効果について解説します。
 図2を見ていただくと、運動療法の開始3ヶ月以内は、有酸素運動が血糖改善効果(HbA1c低下幅)が最も高いです。しかし、4ヶ月目以降は、混合運動はHbA1c を低い値で維持しており、一方で有酸素運動、レジスタンス運動ともにHbA1c の上昇を認めます(HbA1c 0.1%程度の増加ですが・・・)。3タイプで血糖改善に差が出た理由として、体組成変化の違いが考えられます。有酸素運動やレジスタンス運動と比較して、混合運動では 減量効果(-1.6kg)が高く、特に筋肉量(除脂肪体重)を維持したまま、脂肪量が減っています。結果、ウェスト周囲長も減少してます(インスリン抵抗性と相関する指標)。最大酸素摂取量は +1.1ml/kg/分と最も増加幅が大きく、エネルギー基礎代謝が上昇しています。混合運動では、減量(筋肉量を維持/脂肪を減少)およびエネルギー基礎代謝の増加によりインスリン抵抗性が改善することで血糖が維持できたと考えられます。
 図3は、有酸素運動、レジスタンス運動、混合運動の血糖に与える影響を検討した複数の臨床研究の結果を メタ解析の手法を用いて検討した報告になります。レジスタンス運動よりも有酸素運動の方が血糖改善効果は高いですが、混合運動が両方の運動よりも血糖改善効果が高いことが理解いただけるかと思います。

【その他の報告】
 Diabetologia(2020年)でも、混合運動が有酸素運動やレジスタンス運動より血糖改善に優れることが報告されています(Diabetologia. 2020; 63: 1491-1499.)。有酸素運動・レジスタンス運動はインスリン感受性を40%~高め、HbA1cを 0.4-0.5%改善しますが、混合運動(有酸素運動とレジスタンス運動の併用)は、インスリン感受性を約70%高め、HbA1c値を約0.9%低下させます(個人差はありますが・・・)。
 Eur Heart J.(2013年)では、混合運動を週150分~行うことでHbA1cは約0.9%低下することが報告されています(Eur Heart J. 2013; 34: 3035-87)。

 有酸素運動・レジスタンス運動・混合運動の3タイプの運動が、日内血糖変動(運動後24時間)にどう影響するかを検討した興味深い論文があります。同様の報告は見当たらず(私が検索する限り)、全ての1型糖尿病患者さんが同様の経過になるとは限りませんが、日常生活を過ごされる際の参考にはなるのではと考えています。
 1型糖尿病患者さん それぞれに ①運動なし、②有酸素運動、③レジスタンス運動、④混合運動の 4パターンの介入を行い、介入後24時間の血糖変動を検討しています。混合運動では、単独の有酸素運動やレジスタンス運動と比べて 日内血糖変動が小さくなっています。日内血糖変動が大きく、血糖が不安定な糖尿病患者さんには、混合運動による介入が血糖変動を小さくする1つの治療選択となる可能性が考えられます。

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