• 2023年6月25日
  • 2023年6月27日

健康診断で「脂質異常」を指摘されたが・・・

1.「脂質異常」は 動脈硬化性疾患の発症リスクを増加させる

健康診断で測定される “脂質に関する血液検査” には、「総コレステロール」「HDLコレステロール(善玉)」「LDLコレステロール(悪玉)」「中性脂肪」の4種類があります。コレステロールは、細胞膜を構成したり、ステロイドホルモン、ビタミンDの前駆体、胆汁酸の材料として必要な成分です。中性脂肪は、活動するためのエネルギー源となります。つまり、コレステロールも中性脂肪もヒトにとって欠かすことのできない重要な脂質です。しかし、脂質の過不足が生じた「脂質異常症」は、動脈硬化性疾患(狭心症・心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症など)の原因となります。図1に示すように高中性脂肪血症低HDLコレステロール血症高Non-HDLコレステロール血症LDLコレステロール+他の悪玉コレステロール)では、心筋梗塞などの冠動脈心疾患や脳梗塞の発症リスクが高まります。

図1.脂質異常症 と 動脈硬化性疾患 の発症リスクとの関係

  

2.脂質異常症は、どのように診断されますか?

脂質異常症の基準値を、図2に示します。検査データを解釈する際に、重要なポイントが2点あります。

1つ目は、健診での血液検査が、空腹(10時間以上の絶食)で実施されたか、随時(食後)で実施されたのかです。動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年から、高中性脂肪血症を評価する際に、空腹時と随時採血で異なる基準値が設けられています。

2つ目は、LDLコレステロール(Non-HDLコレステロール※)について、「境界型」の基準値が設けられています。動脈硬化巣の内部には、LDLに由来するコレステロールが沈着し、動脈硬化性疾患を引き起こします。特に、脂質異常症以外の動脈硬化のリスク因子(糖尿病や高血圧など)がある場合には、「境界型」の方でも積極的に治療を行う必要性が高くなります。LDLコレステロールの個別管理目標値について、事項で解説いたします。

※Non-HDLコレステロール:総コレステロールからHDLコレステロールを引き算したコレステロール量です(LDLコレステロール以外の悪玉コレステロールも含んでいる)

図2.脂質異常症の診断基準

3.LDLコレステロールの管理目標値は、どのように個別設定するのですか?

まずは 動脈硬化性疾患(冠動脈疾患、アテローム血栓性脳梗塞)の既往を確認します。「あり」の場合には、二次予防(再発予防)のためにLDLコレステロール 100mg/dl未満での厳格な管理が必要となります(糖尿病や家族性高コレステロール血症の方は 70mg/dL未満)。「なし」の場合には、一次予防(発症予防)のために「低リスク群」「中リスク群」「高リスク群」の3群に層別化して、それぞれの管理目標値を設定します。糖尿病慢性腎臓病、末梢動脈疾患と診断されている方は、「高リスク群」に分類します。これらの該当疾患がない場合には、久山町研究によるスコアを用いて、10年以内の動脈硬化性疾患の発症確率(絶対リスク)を年齢階級毎に算出し、「低リスク群」「中リスク群」「高リスク群」に層別化します。

図3.LDLコレステロールの管理目標値

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