- 2023年9月4日
糖尿病とは
1.糖尿病になる仕組みとは
糖尿病とは、インスリンの作用が低下した結果、血液中のブドウ糖(血糖)を有効に利用することができず、慢性的に高血糖が続く病態です。正常な血糖は、空腹時70~109mg/dL、食後2時間100~139mg/dLの範囲で変動します(図1)。
血糖値を下げる働きを持つホルモンはインスリンだけです。膵臓のベータ(β)細胞から血液中に分泌されたインスリンは、末梢臓器(筋肉、脂肪、肝臓など)に働いてブドウ糖を取り込ませて血糖を低下させます。しかし、インスリンが足りない状態(膵臓のインスリン分泌低下)、インスリンが効きにくい状態(末梢臓器でのインスリン抵抗性)が起きると高血糖を来して、糖尿病が顕在化します(図2)。
2.糖尿病の成因分類
糖尿病は、その成り立ちによって4種類に分類されます。
❶1型糖尿病
主に自己免疫学的機序により膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンを合成・分泌できなくなり、糖尿病を発症します(約90%が自己免疫性:1A型、残り10%が特発性=原因不明:1B型とされています)。ウイルス感染を契機に構築された免疫が、膵臓のβ細胞を標的にして攻撃・破壊してしまう機序が想定されています。2型糖尿病とは異なり、1型糖尿病の発症に生活習慣の悪化は無関係です。インスリンを体内で合成・分泌できないため、インスリン療法が必要となります。
❷2型糖尿病
日本人糖尿病の90%が2型糖尿病です。遺伝的素因によるインスリン分泌能の低下に、環境的素因としての生活習慣の悪化に伴うインスリン抵抗性が加わることで、糖尿病を発症します。2型糖尿病は、1型糖尿病とは異なり家族内集積が強い特徴があります。その理由としては、例えば親が2型糖尿病で生活習慣に問題がある場合、親自身の食事や運動などの生活スタイルが子供に大きな影響を与え、子供の生活スタイルも親に似てしまうからだと考えられます。インスリン抵抗性を軽減するための食事療法や運動療法が、2型糖尿病の基本的治療となります。
❸その他の特定の機序、疾患による糖尿病
糖尿病以外の病気や、治療薬の影響で血糖値が上昇して、糖尿病を発症する場合があります。
A.遺伝子として遺伝子異常が同定されたもの
1.膵β細胞機能に関わる遺伝子異常
2.インスリン作用の伝達機構にかかわる遺伝子異常
B.他の疾患、条件に伴うもの
1.膵外分泌疾患
2.内分泌疾患
3.肝疾患
4.薬剤や化学物質によるもの
5.感染症
6.免疫機序によるまれな病態
7.その他の遺伝子症候群で糖尿病を伴うことの多いもの
❹妊娠糖尿病
妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常です。
妊娠後期になると、胎児が成長するために、母体から胎児へのブドウ糖の供給量を増やす必要があります。胎盤から産生されるホルモン(ヒト胎盤性ラクトゲンやプロゲステロンなど)やサイトカイン( TNF-α など)により、生理的インスリン抵抗性を発現させることで、母体のブドウ糖利用を抑制し、胎児への恒常的なブドウ糖供給を可能にします。一般的には、妊娠後期には非妊娠時の3〜5倍のインスリン分泌量が必要となります。妊娠中のインスリン抵抗性に対して、十分量のインスリンが分泌されない場合に、高血糖(妊娠糖尿病)を来します。治療として、1食あたりの炭水化物量を減らすための分割食(食事療法)に加えて、必要に応じてインスリン療法を行います。