- 2023年9月4日
- 2023年9月6日
生活習慣と2型糖尿病発症との関係
1.高脂肪食、運動不足による内臓脂肪蓄積が、インスリン抵抗性を増大させる
過食(とくに高脂肪食)や運動不足が長期的に続くと、消費できずに余ったカロリーが脂肪組織(皮下脂肪・内臓脂肪)に蓄積されて体脂肪率が増加します。体脂肪率が20%を超えると、内臓脂肪組織から過剰の遊離脂肪酸が放出され、脂肪組織以外の臓器にも蓄積・貯蔵(異所性脂肪)され、骨格筋・肝臓・脂肪組織ではインスリン抵抗性の増大、膵臓ではインスリン分泌低下を来します(脂肪毒性)。この脂肪毒性によるインスリンの作用不足から、血糖が上昇して糖尿病を発症します。血糖コントロールが不十分な高血糖は、インスリン抵抗性やインスリン分泌低下を増大し、血糖値をさらに悪化させます(糖毒性)。糖尿病治療薬で血糖を下げて糖毒性を解除できても、脂肪毒性が残存する状態では全身的な病態を解決することはできません。糖毒性と脂肪毒性を意識した食事・運動療法による生活スタイルの改善が重要となります(図1)。
図1.脂肪毒性/糖毒性を介した糖尿病発症の機序
*脂肪毒性によるインスリン抵抗性の機序(図2)
外因性の高脂肪食、内因性の内臓脂肪や脂肪肝から放出された大量の遊離脂肪酸が末梢組織内に流入して、ジアセルグリセロール(DAG)やセラミド(Ceramide)などの脂質代謝物として蓄積し、インスリン作用を減弱します。その結果、肝臓からは血液中に糖が放出され(糖新生の亢進)、筋肉や脂肪組織での糖取り込みが低下して高血糖を来します。
図2.インスリン抵抗性による高血糖の機序
2.持続的なインスリン抵抗性は、膵β細胞を疲弊させてインスリン分泌能を低下させる
インスリン抵抗性によりインスリン作用が減弱しても、血糖値を一定に保つために膵臓は代償性にインスリン分泌量を増やします。しかし、頑張ってインスリンを分泌し続けた膵臓は、やがて疲弊し、糖尿病の診断時には膵臓β細胞機能は50%程度まで低下しています。その後も、インスリン抵抗性が改善されない状況が続けば、膵β細胞機能はますます低下し、最終的にはインスリン分泌不全、つまりインスリン療法なしでは血糖を維持できないインスリン依存状態に至ります(図3)。
図3.2型糖尿病の自然史
日本人を含むアジア人は、欧米人と比べてインスリン分泌量が半分程度であり(図4A)、インスリン分泌能が低いことが2型糖尿病発症の主な原因であると考えられています。一方で、欧米人と比べて、肥満度(BMI)が小さくてもインスリン抵抗性が高いことが最近の研究で明らかになってきました(図4B)。やや小太り体型でもインスリン抵抗性が高まり、もともとのインスリン分泌能が低いことも相まって、日本人は糖尿病になりやすい体質だといえます。
図4.日本人2型糖尿病の特徴