- 2023年11月30日
- 2023年12月17日
運動療法③:食後すぐは座らずに過ごすことで血糖は低下する
こまめに動くことで食後血糖は低下する(計画立てた運動でなくても血糖は下がる)
これまで 運動療法①および②の項では、運動の計画を立てる際のポイントについて説明をしてきました。しかし、頭では理解できても、実際に行動に移すのは大変です。「寒い時間帯のウォーキングはつらい」、「帰宅後の暗い中での運動は危険」など運動環境が整わないこともあります。そういった状況下でも、継続して行える食後血糖を下げる “活動” についてお話しをしたいと思います。
こまめに動くことで食後血糖を下げることができます。私たちが想像する運動(1日1回30分間のウォーキング)と比べて、頻回の小さな活動も血糖を下げる効果があることを紹介したいと思います。
図1A)は、毎食後に10分間ウォーキングした場合の1日の血糖改善効果を検討した研究です。1回30分間のまとめ運動と比較して、毎食後に10分程度の運動を行う方が1日の血糖改善効果は高くなります。運動は血中グルコースを筋肉内に取り込んでエネルギーとして利用するため、運動時間ではなく運動回数を増やす方が有効であることは想像に容易いのではないでしょうか。
図1B)の研究では、食事に関係なく頻回短時間活動(30分毎に2分弱のウォーキングを実施)を行うことで、日中の血糖値が 37%低下(日中を座って過ごした場合との比較)することが示されています。運動となると気が乗らない状況があると思いますが、掃除や買い物など日常の活動を食後中心に取り入れることで血糖値もよくなることを示した興味深い論文です。
図1.頻回軽運動(短時間活動)による血糖改善効果
食後に立って過ごすだけでも血糖改善が期待できる
「こまめに動きなさい」と言われても 、勤務中はデスクワーク主体で動く機会がほとんどない方もいらっしゃるかと思います。この場合、どういった対策をとると良いのでしょうか。
図2は、勤務中はデスクワーク主体(座って業務)の不動産会社職員に、スタンディングデスクに変更して業務を行った場合の血糖変化を観察した研究になります。日中のデスク以外の活動量に座位業務および立位業務に差はありませんでしたが、立位業務で昼食後の6時間血糖が有意に低値を示しました。短時間の活動では、ウォーキングと同程度に立位でも血糖が下がる可能性があり(図3A)、特に食後すぐに立位で過ごす(座らない)ことが食後高血糖の抑制に効果的であるといえます(図3B)。食後に “ソファーでくつろいでテレビを見たい” ところを、”食後15分は立ってテレビを見る” などの 小さな行動変化でも血糖が改善する可能性があることを知っていただければ嬉しく思います。
図2.
図3.