1型糖尿病

糖尿病のイメージ画像

1型糖尿病は、生活習慣と関係なく、ウイルス感染などを引き金に活性化された自己免疫反応が、膵臓にあるインスリンを分泌するβ細胞を破壊することで体内のインスリンが不足して、高血糖状態を起こす病気です。インスリンが欠乏した状態では、大量のケトン体が産生され、高血糖による脱水からの腎臓の酸排泄低下が加わって糖尿病性ケトアシドーシスという危機的状態となり、昏睡や死に至るケースもあります。そのため、1型糖尿病の患者さんは、インスリン療法が基本的な治療となります。

2型糖尿病

2型糖尿病は、遺伝的素因によるインスリン分泌能の低下に、環境的素因としての生活習慣の悪化に伴うインスリン抵抗性が加わって、高血糖状態を起こす病気です。2型糖尿病は、1型糖尿病とは違って家族内集積が強く、家系に糖尿病の方がいる場合は注意が必要です。その理由としては、例えば親が2型糖尿病で生活習慣に問題がある場合、親自身の食事や運動などの生活スタイルが子供に大きな影響を与え、子供の生活スタイルも親に似てしまうからだと考えられます。患者さんだけでなくご家族を含めて、糖尿病に関する食事療法や運動療法の知識提供を行うことが重要となります。

エネルギー摂取から高血糖までの流れ画像

食生活と糖尿病

過食(とくに高脂肪食)や運動不足が長期的に続くと、脂肪組織(皮下脂肪・内臓脂肪)が増加し体脂肪率が増加します。食事だけでなく、内臓脂肪組織から放出された過剰の遊離脂肪酸が、脂肪組織以外の臓器に蓄積・貯蔵(異所性脂肪)されます。この異所性脂肪は臓器障害を生じるだけでなく、高血糖・高血圧・脂質異常症・高尿酸血症・動脈硬化性疾患などの全身的な病態を引き起こします。
糖尿病の発症・増悪においては、異所性脂肪蓄積による骨格筋・肝臓・脂肪組織のインスリン抵抗性の増大、膵臓からのインスリン分泌低下が大きく影響します。慢性的な高血糖は、さらにインスリン抵抗性やインスリン分泌低下を悪化(糖毒性)させて、糖尿病による臓器障害を進展させます。
糖尿病治療薬で血糖を下げて糖毒性を解除できても、脂肪毒性が残存する状態では全身的な病態を解決することはできません。食事療法や運動療法による生活スタイルの改善が重要となります。

糖尿病の治療の目的

「糖尿病治療の目標」は、糖尿病の合併症の発症・進展を予防し「糖尿病のない人と変わらない寿命とQOLを確保すること」にあります。そのためには血糖・血圧・脂質の良好なコントロール、適正体重の維持、禁煙などの総合的な管理を長期に維持することが必要とされています。糖尿病に対する社会的な差別や偏見(スティグマ)により前向きに治療に取り組めない、治療継続が難しいなどの理由から糖尿病の重症化や合併症が進まないように、当クリニックでは患者さんの心理負担にも配慮した診療を心がけて取り組んでいきます。

血糖コントロール目標の画像
高齢者糖尿病の血糖コントロール目標の画像

合併症

細小血管障害

糖尿病性神経障害
細小血管障害の中で早期から自覚症状が現れやすい合併症です。特徴的な症状は、両足のしびれや痛みなどの異常知覚(夜になると症状が強くなる)、進行すると知覚低下を来します。その他、胃腸の不調、立ちくらみ、尿失禁、勃起障害など様々な自律神経障害の症状も出ます。
糖尿病網膜症
眼の網膜にある血管が、高血糖の悪影響を受けて眼底出血を起こし、視力障害をもたらします。糖尿病による網膜症で失明する人は毎年約3,000人に及び、成人後の失明の主要な原因となっています。網膜症は末期になるまで自覚症状がほとんどないことから、定期的な眼底検査が重要となります。
糖尿病性腎症
高血糖により腎臓の細い血管が集まっている糸球体が壊れたり、動脈硬化により腎臓全体の機能が低下していきます。この合併症も自覚症状がないまま進行し、末期腎不全に至ると透析導入(透析導入の原疾患 第1位)が必要になります。糸球体が壊れると血液中のたんぱくの一種であるアルブミンが尿中に漏れ出るようになることから、早期発見のためには定期的な蛋白尿(アルブミン尿)の検査が重要となります。

動脈硬化性疾患(大血管障害)

冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)・脳血管障害(脳梗塞)・末梢動脈疾患(足潰瘍・足壊疽)

糖尿病治療

糖尿病治療の基本は、患者さん自身に糖尿病の病態を十分に理解いただき、それぞれの患者さんの希望や価値観、社会的背景を考慮した食事療法と運動療法、足りない部分を薬物療法で補うことが大切です。当クリニックでは、経験豊富な専任の糖尿病療養指導士と協力(チーム医療)しながら、専門家ならではの治療選択枝を複数ご提示し、前向きに取り組める治療を選択いただきたいと考えています。

糖尿病薬の種類

病態に合わせた血糖降下薬の表

インスリンポンプ療法

携帯型のインスリンポンプを用いてインスリンを持続的に皮下投与します。専用の持続血糖測定器と連動させることで、インスリンポンプのモニタ画面にリアルタイムにグルコース値、血糖の変動傾向を表示させることができます(SAP療法:Sensor Augmented Pump)。
ミニメドTM770Gは、センサグルコース値と過去のインスリン注入履歴をもとに基礎インスリン注入量が自動調整されます。

携帯型のインスリンポンプ装着イメージ画像 携帯型インスリンポンプ
センサグルコース値のグラフ

当クリニックは、SAP療法の施設基準をみたした医療機関です。

持続血糖測定器

持続血糖測定(CGM:Continuous Glucose Monitoring)は、皮下に刺したセンサーにより皮下の間質液中の糖濃度(間質グルコース値)を持続測定することで、1日の血糖変動を知ることが出来る医療機器です。

Free style リブレ
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Dexcom G6(リアルタイムCGM)
Dexcom G6(リアルタイムCGM)

当クリニックは、リアルタイムCGMの施設基準をみたした医療機関です。