甲状腺疾患のイメージ画像

甲状腺疾患は、ホルモンの異常(甲状腺機能の異常)と腫瘤の病気に分けられます。

ホルモンの異常

ホルモンの異常は、ホルモンが過剰となる甲状腺機能亢進症と不足する機能低下症に分類されます。

症状について

甲状腺ホルモンの機能亢進症を来す代表的な疾患

  • 動悸がする、脈が早い、脈が不整(心房細動)
  • 汗をかきやすい、暑がりになった
  • 手足が震える
  • イライラする、落ち着きがない
  • 下痢になった
  • 食欲はあるが体重が痩せている
  • 眼球突出している、物が二重に見える(複視)
  • 血液検査でコレステロールが低くなった

甲状腺機能低下症を疑う症状

  • 脈がゆっくりになった
  • 皮膚が乾燥する、寒がりになった
  • 疲れやすい、食欲が低下した
  • 息切れ、むくみがある
  • 声がかすれる
  • 便秘になった
  • 食欲はないのに体重が増えた
  • 月経が不順になった
  • 血液検査でコレステロールが高くなった

甲状腺ホルモンの機能亢進症を来す代表的な疾患

バセドウ病

甲状腺を刺激する自己抗体(TRAb)が体内で産生された結果、甲状腺ホルモンの合成・分泌が増加することで甲状腺機能亢進を来す病気です。
治療は甲状腺ホルモンの合成・分泌を減らしてホルモン量を正常化させることです。①抗甲状腺薬による甲状腺細胞での甲状腺ホルモンの合成・分泌の抑制、②放射性ヨウ素を用いたアイソトープ治療や外科的甲状腺切除術による甲状腺細胞の数を減少させる治療があります。

治療
  • 抗甲状腺薬
    抗甲状腺薬で甲状腺ホルモンを正常化している間にTRAbが自然に低下・消失することで病気の寛解を目指す治療です。
    寛解まで時間がかかること(一般的には2年程度)、抗甲状腺薬の中止により病気が再燃することも少なくありません。
    抗甲状腺薬を開始してから2ヶ月間は重篤な副作用(無顆粒球症、肝障害など)が出現しないかを2週間毎に血液検査をチェックする必要があります。
  • アイソトープ治療
    腫瘍・免疫核医学研究所
  • 外科的甲状腺切除術

甲状腺機能性結節(プランマー病)

甲状腺腫瘍が甲状腺ホルモンを過剰に産生・分泌することで甲状腺機能亢進を来す病気です。
治療は機能性結節の除去・破壊になります。手術、アイソトープ治療、経皮的エタノール注入療法、ラジオ波焼灼療法などがあります。

無痛性甲状腺炎

慢性甲状腺炎(橋本病)が基礎疾患にある状況で、何らかの原因により甲状腺が破壊されて血中に甲状腺ホルモンが漏出し、一過性に甲状腺機能亢進症状を来す病気です。その後、甲状腺機能低下症になることがありますが、多くは数カ月以内に甲状腺機能は正常化します。まれではありますが、永続性の甲状腺機能低下症になってしまった場合には甲状腺ホルモン薬の内服を継続する必要があります。

亜急性甲状腺炎

ウイルス感染により甲状腺内に炎症が起き、甲状腺が破壊されて血中に甲状腺ホルモンが漏出し、一過性に甲状腺機能亢進症状を来す病気です。
甲状腺の炎症に伴って甲状腺の痛み(痛みの場所が移動)、甲状腺の腫れ、発熱などを伴います。
治療としては甲状腺の炎症を抑えるステロイド薬、解熱・鎮痛剤、頻脈を抑えるβ遮断薬などを併用することがあります。多くは数か月で症状は消失し、甲状腺機能も正常化します。まれではありますが、永続性の甲状腺機能低下症になってしまった場合には甲状腺ホルモン薬の内服を継続する必要があります。

甲状腺機能低下症を来す代表的な疾患

橋本病

甲状腺に対して破壊性の自己抗体(TPOAb、TgAb)が過剰に作られた結果、慢性的な甲状腺破壊(炎症)から甲状腺ホルモンの分泌が低下する病気です。

ヨウ素の過剰摂取(イソジンうがい連用、昆布の大量服用、造影剤の使用など)

甲状腺が大量のヨウ素に曝露されると、甲状腺ホルモンの合成過程でのヨウ素の有機化が抑制されて、甲状腺ホルモンの合成が低下する病態です。
ヨウ素の摂取制限をすることで甲状腺機能は回復します。

甲状腺切除後、頚部外照射後など

甲状腺機能低下症の治療は、甲状腺ホルモンである合成T4製剤の服用による治療を行います。定期的な採血を実施し、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の血中濃度をみながら投薬量を調整していきます。

腫瘤

甲状腺腫瘍は良性(腺腫、腺腫様甲状腺腫)と悪性(甲状腺がん)に分類されます。

良性腫瘍
濾胞腺腫、腺腫様甲状腺腫
悪性腫瘍
乳頭癌、濾胞癌、髄様癌、未分化癌、悪性リンパ腫

甲状腺腫瘍の大きさや形状の評価には甲状腺エコー検査が有用ですが、エコー検査のみでは良性・悪性の判別は難しく、細胞診検査を行う必要があります。穿刺細胞診が必要と考えられる場合には、その後の治療も可能な連携病院に紹介させていただいております。

穿刺細胞診を行うべき対象者

充実性結節
  • 20mm径より大きい場合
  • 10mm径より大きく、超音波検査で何らかの悪性を示唆する所見がある場合
  • 5mm径より大きく、超音波検査で悪性を強く疑う場合
充実性成分を伴う嚢胞性結節
  • 充実成分の径が10mmを超える場合
  • 充実成分に悪性を疑う超音波所見がある場合